地方自治法第100条第14項には、「普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会
の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対
し、政務調査費を交付することができる。」という規定があり、北海道においても、 「北海道議会の
会派及び議員の政務調査費に関する条例」が制定され、同条例により、平成20年度においては、
各会派に対しては所属する議員1人当たり月額10万円が、各議員に対しては月額43万円が交付
されている。 会派の代表者及び議員は、「北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例」第9条の 規定により、年度終了日の翌日から起算して30日以内に、政務調査費に係る収入及び支出の報 告書(以下「収支報告書」と称す)を議長宛に提出する事になっているが、2009年4月30日迄に提 出された収支報告書によれば、平成20年度に交付(支給)された総額は 6億5790万円以上で、使 用額(支給額から返却額を引いた額)は6億4853万円以上であるが、 その内、各議員に対して交 付された額は5億3320万円以上で、使用額は5億2436万円以上であり、その内、人件費として使用 された金額は、1億6721万3575円である。 当請求において、監査を請求するのは、議員が使用した政務調査費の内、収支報告書において 人件費に使用したとして届けられた分である。 政務調査費の使用に関しては、上記地方自治法第100条第14項の規定により運用されなけれ ばならないが、北海道議会の場合、「北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例」 第8条において、”政務調査費は、別に定める使途基準に従い、使用しなければならない。” とされ、それを受けて、「北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する規程」の第4条及び 別表第2において、議員に係る政務調査費の内の人件費は、”議員が行う調査研究を補助する 職員を雇用する経費”と定められている。 同規定は、議員自身が政務調査を実施する際に、それを”補助する”為に人件費を計上する事 が可能であるとしているのみであり、その場合の「政務調査」とは、条例の制定や改定等の際に おける”特定の調査”と解すべきであり、又、その調査に関する雇用形態は臨時的な雇用を想定 していると解すべきであって、議員の政治活動全般に関与する秘書等の給与等を支払ってもよい とされている訳ではない。 又、「北海道議会の会派及び議員の政務調査費に関する条例」第9条第1項において、収支報 告書は別記第2号様式にて提出しなければならない旨が定められていて、第2号様式の欄外に は、「備考欄には、主たる支出の内訳を記載する。」という注意書きがある。 しかるに、2009年4月30日迄に各議員より提出された平成20年度の収支報告書の人件費に関 する記載によれば、備考欄に何も記載していないものや「人件費」と記載しているもの、秘書の給 料である旨記載しているものが有る他、明らかに秘書と同様の業務を行っていると看做される常 用雇用と思われるものが大部分であり、臨時雇用である旨記載しているものに関しても、政務調 査費として、上記法令・条例・規程に合致した使用内容であると判断できるものは無い為、議員が 使用した政務調査費の人件費分に関しては、全て、目的外使用につき違法である。 仮に、「按分」という考え方により、一部を認める場合においても、会計帳簿のみならず、源泉徴 収票等により支払総額を正確に確認する必要がある。 又、按分比率も、一定の割合で認めるのではなく、支払いを受けた者の全体の勤務時間と具体 的な特定の調査研究の補助をした時間を記録により確認した上で、個々に認定すべきであろう。 地方財政法第4条第1項には「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ 最小の限度をこえて、これを支出してはならない」という規定があるが、この規定の趣旨にも合致 した判断がされる事を期待する。 別紙により、各議員における収支報告書記載の人件費の金額(当請求における目的外使用の 金額)及び人件費の備考欄の記載内容を示す。(人件費の使用額があるにも関わらず備考欄に 何も記載の無い者については【記載無し】と表す) 目的外使用の分に関しては、違法行為により、北海道に対して損害を与えたものであるから、 北海道知事は、目的外使用をした議員に対し、速やかに、当該金額の返還請求をする事を求め る。 |