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[徳島ラジオ商殺し事件]

　富士茂子さん

====事件の概要====

　1953年11月５日、徳島県徳島市でラジオ販売業・Ｓさん（50歳）が刺殺された。現場には、内妻の富士茂子さん（当時43歳）および三女（当時９歳）が一緒にいて、二人は、男が侵入したことを証言した。

　徳島市警は、居直り強盗またはＳさんに恨みをもっていた外部の者の犯行とみて捜査を始めたが、捜査は難航し迷宮入りかと思われる状況となった。
　その頃、徳島地検は、内部の者の犯行とみて独自の捜査をしていたが、店員二人の「茂子が犯人である」という証言を得て、茂子さんを殺人容疑で逮捕した。
　茂子さんは、取り調べ段階で「自白」し起訴となったが、公判廷では一貫して無実を主張した。

　第一審の徳島地裁は「懲役13年」を判決、高松高裁への控訴は棄却となった。茂子さんは、最高裁にいったんは上告したが、裁判費用がかさみ家族が困る事などを心配し途中で裁判をあきらめ、上告を取り下げ服役した。

　その後、二人の店員は、茂子さんの親類により追求され、「検事の誘導・強制によって嘘の証言をしてしまった」と告白した。

　５度目の再審請求後に茂子さんは亡くなったが、その後も茂子さんの４人の姉妹弟により再審請求が継続され、1980年12月に徳島地裁にて再審開始決定、検察側の即時抗告も高松高裁で棄却となり再審が開始、1985年７月９日には徳島地裁において、初の”死後再審による無罪”が宣言された。

#####視点#####
「偽証罪」圧力が生んだ”偽証” - - - 店員二人の証言

　富士茂子さんを有罪へ導いた最大のキメ手は、店員二人の証言であった。「被害者と茂子が格闘しているのを見た」「（凶器の）刺身包丁を捨てる様に依頼され川に投げ捨てた」といった検察官に対する供述を公判においてもほぼそのまま維持していたのである。

　その内の一人は、証言が嘘であった事の告白の手記において、次の様に書いている。
　「私は・・・大変なあやまちをおかしてしまった。私はなぜ真実をのべなかったのであろうか。しかしあの時自分は真実だけ言えてそれで済んだでしょうか。・・・・・・私は何度か言いなおし取り消したい事がありましたが、ぎしょう罰（注：「偽証罪」の意味と思われる）を知ったので、それにおいても一度口に出したことは取消せないと言われた私は苦しんだ・・・」

　「もし取り消せば偽証罪となる」と思わされてしまった事により、公判廷において”偽証”を続けてしまったのである。
　当時16歳および17歳の少年二人に、そう思わせた罪は、”偽証”の罪にも増して大きい。

((( 略歴 )))

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1953.11. 5---Ｓさん刺殺される

1954. 8.13---富士茂子さん殺人容疑で逮捕される

9. 2---殺人罪で起訴

1956. 4.18---第一審判決（徳島地裁）･･･懲役13年

1957.12.21---控訴審判決（高松高裁）･･･控訴棄却

1958. 5.10---上告取り下げ

1959. 3.20---第１次再審請求 ==＞棄却

11. 9---第２次再審請求 ==＞棄却

1962.10.23---第３次再審請求 ==＞棄却

1966.11.30---仮出獄

1968.10.14---第４次再審請求 ==＞棄却

1978. 1.31---第５次再審請求

1979.11. 8---姉妹弟が再審継承申請

11.15---再審継承許可となり「第６次再審請求」に移行

（同日夜）富士茂子さん死去

1980.12.13---再審開始決定（徳島地裁）

1983. 3.12---検察側の即時抗告を棄却（高松高裁）

1985. 7. 9---再審判決（徳島地裁）･･･無罪

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戦後の主な事件

冤罪事件関係データベース