[帝銀事件]


 平沢貞通さん



====事件の概要====

 1948年1月26日午後3時過ぎ、東京都豊島区椎名町、帝国銀行椎名町支店に、「 東京都」のマークの入った腕章をした男が訪れ「付近に赤痢が発生したので、予防 薬を飲むように、あとでGHQもくる」と言って行員ら16名に水溶液を飲ませた。
 この結果、全員が苦しみだし、うち12名が死亡、犯人は現金16万円余と額面1万 7千余円の小切手を奪い逃走した。

 捜査が進むうちに、未遂ではあるが同様の事件が前年に安田銀行荏原支店で発生 しており、この際に犯人が「厚生技官 松井蔚」という名刺を残している事が判明 し、その名刺の交換先の捜査により、画家の平沢貞通さん(当時56歳)が逮捕され るに至った。

 長期に亘る拘留と取り調べの結果、逮捕の約1ヶ月後に「自白」、その後約20日 間程取り調べが続いた末、強盗殺人罪等で起訴となった。

 平沢さんは第一審の第一回公判から「自白」を翻し無実を訴えた。
 1年7ヶ月に亘る公判の結果、東京地裁は、「自供」・目撃者の証言・「松井名 刺」などを証拠に有罪とし、「死刑」を言い渡した。
 控訴審の東京高裁判決も同様の理由で、「死刑」であった。
 最高裁は書面審理のみで、上告理由なしとして上告を棄却した。

 死刑確定の1955年より、平沢さんは17次に亘る再審請求を出し続け、「平沢貞通 氏を救う会」による処刑阻止運動などもあり歴代の法務大臣が死刑執行命令を出さ なかった為処刑はされず、1987年5月に八王子医療刑務所で95才の生涯を終えるま で確定死刑囚として獄中より無実を訴え続けた。

 平沢さんの死後も、再審請求が続けられている。






#####視点#####
潰された捜査 - - - 満州731部隊

 この事件の捜査において、当初は医療関係者特に軍関係に、警察の捜査の目が向 けられていた。その理由としては、第一に、毒物の注入行為が極めて自然で自信に 満ちたものであった事が挙げられる。

 生き残った目撃者の証言によると、犯人は毒殺用の溶液を120cc程度の小さな 容器に入れてきて、それを2cc入りのピペット・スポイトで正確に注ぎ込んだが、 その動作は落ち着き払っていたそうだ。第二に、毒物そのものが、旧陸軍で極秘に 研究され、製造されていた通称「ニトリール」(アセトン・シアン・ヒドリン)に 極めて類似していると思われた為だった。

 捜査は満州731部隊(旧日本陸軍関東軍第731部隊・・・・通称「石井部隊」) に向いた。この部隊は、戦中、ハルピンの南方の平房という所にあり、厳重な警戒 のもと、細菌や毒物の実験をしていたのだった。その実験は、ペスト、コレラ等の 病原体を生きている人間(捕虜)に注入し、効果を確かめるという恐ろしい人体実 験だった。

 しかし、この方面の捜査は、いつしか潰されてしまった。GHQからの圧力の為 だったと言われる。

 今でも、平沢さんの様な一介の画家にあの様な犯罪ができるはずはないという見 方は強く残っている。






((( 略歴 )))
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 1948. 1.26---帝国銀行椎名町支店で行員ら毒物殺傷事件発生   
       8.21---平沢貞通さん逮捕される                       
       9. 3---私文書偽造同行使等で起訴                     
      10.12---強盗殺人等で起訴                             
 1950. 7.24---第一審判決(東京地裁)・・・ 死刑               
 1951. 9.29---第二審判決(東京高裁)・・・ 死刑               
 1955. 4. 6---上告審判決(最高裁)  ・・・ 上告棄却           
       5.10---第1次再審請求  ==>  棄却                   
 1956. 3. 1---第2次再審請求  ==>  棄却                   
 1981. 1.19---第17次再審請求  ==>  棄却                   
 1987. 4.21---第18次再審請求                               
       5.10---平沢貞通さん八王子医療刑務所にて死去         
       7.13---第18次再審請求棄却(東京地裁)               
 1989. 5.10---第19次再審請求                               
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戦後の主な事件

冤罪事件関係データベース