[狭山事件]


 石川一雄さん



====事件の概要====

 1963年5月1日、埼玉県狭山市で、女子高校生・Nさん(16歳)が帰宅途中に行 方不明となり、同夜、N家に、「5月2日の夜12時に20万円を指定の場所に持って こい」という意味の脅迫状が届いた。

 翌日、40人程の刑事が指定された場所に張り込み、Nさんの姉が20万円に見せか けた新聞紙を持って23時50分過ぎから指定場所へ立っていたところ、翌3日0時10 分頃に犯人が現れたが、刑事達は、犯人を取り逃がした。
 通学路を中心に大規模な捜索が行われた結果、Nさんは、翌4日に、農道に埋め られた遺体で発見されるに至る。

 捜査本部は、現場付近で発見されたとするスコップに端を発した捜査により、同 月23日に、石川一雄さん(当時24歳)を、別件の窃盗等の容疑で逮捕した。石川さ んが本件については否認を続けた為、6月17日に一旦保釈の形を作り、留置場を出 たとたん、今度は本件の殺人容疑で逮捕した。
 石川さんは、その後、「自白」に追い込まれ、起訴、公判となった。

 第一審の浦和地裁は、「死刑」を判決。
 石川さんは、その後、「自白」を撤回し無実を主張した。

 東京高裁での控訴審は、10年にわたる裁判の末に原審破棄で減刑の「無期懲役」 を判決。その後の最高裁への上告は棄却となった。

 第1次再審請求は棄却。第2次再審請求が審理中の1994年12月には仮出獄となっ た。

 2005年3月、第2次再審請求にかかる特別抗告棄却。

 2006年5月、東京高裁へ第3次再審請求。






#####視点(1)#####
差別捜査 - - - 証拠とされたスコップ

 この事件の捜査にあたった警察は、被差別部落に対する偏見と予断によって、無 実の部落青年石川さんを犯人にデッチ上げていったのではないかと強く指摘されて いる。

 例えば、証拠とされたスコップについて、警察は、「発見されたスコップはI養 豚場のものである」「発見されたスコップは死体を埋めるのに使われた」「I養豚 場からスコップを盗み出せるのは出入りの部落民に限られる」という3点の独断を もとに被差別部落への集中的な見込み捜査を行っていったのである。






#####視点(2)#####
維持された「自白」 - - - ”男の約束”

 石川さんは、捜査段階での「自白」を、控訴審の冒頭まで維持し続けている。こ の様なケースは他の冤罪事件にはあまり見られないところである。なぜこの様な形 となったのであろう。

 警察は逮捕してから31日間取り調べを行い「自白しないと精液をとって調べる」 といった脅迫、髪の毛を引っ張るといった暴行、「俺を父親だと思ってくれ」とい った泣き落とし、また、犯人を石川さんの兄さんの様に思わせ、石川さんに一家の 柱である兄さんの「身代わり」になる様に誘導し、「10年で必ず出してやる」とい った”男の約束”など巧妙な形で石川さんに「自白」を誘導していったと言われて いる。

 石川さんは、その”男の約束”を信じ切ってしまったが故に、第一審段階では、 「自白」を維持していた訳である。






((( 略歴 )))
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 1963. 5. 1---Nさん行方不明となる                         
       5. 4---Nさんの遺体発見される                       
       5.23---石川一雄さん別件で逮捕される                 
       6.13---別件の窃盗罪等で起訴                         
       6.17---保釈直後に本件で再逮捕                       
       7. 9---強盗殺人罪等で追起訴                         
 1964. 3.11---第一審判決(浦和地裁)・・・ 死刑               
 1974.10.31---控訴審判決(東京高裁)・・・ 無期懲役           
 1977. 8. 9---上告審判決(最高裁)  ・・・ 上告棄却           
       8.30---第1次再審請求 ===>棄却                     
 1986. 8.21---第2次再審請求                               
 1994.12.21---仮出獄                                       
 1999. 7. 7---第2次再審請求棄却(東京高裁第4刑事部)     
       7.12---東京高裁へ異議申立                     
 2002. 1.23---異議申立棄却(東京高裁第5刑事部)           
       1.29---最高裁へ特別抗告                       
 2005. 3.16---特別抗告棄却(最高裁)                 
 2006. 5.23---第3次再審請求                               
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戦後の主な事件

冤罪事件関係データベース