[免田事件]


 免田栄さん



====事件の概要====

 1948年12月29日深夜、熊本県人吉市で、Sさん夫婦{夫(76歳)、妻(52歳)} が殺され、娘さん2人(当時14歳と12歳)も重傷を負う事件が発生した。

 警察は、この事件について興味深げに話していた免田栄さん(当時23歳)の事を 聞きつけ、怪しいとにらみ、1949年1月13日夜に連行、翌日未明に別件(玄米とモ ミの窃盗容疑)の逮捕状を執行した。
 免田さんは、同月16日に一時釈放の形となるが、釈放の約2時間後に強盗殺人容 疑で再逮捕され、アリバイの主張も崩され、「自白」に追い込まれていった。

 強盗殺人罪等により起訴された免田さんは、第一審第3回公判時以降否認を続け たが、熊本地裁の第一審判決は「死刑」、その後、福岡高裁への控訴は棄却、さら に最高裁への上告も棄却となり、「死刑判決」が確定した。

 獄中で”再審”という道がある事を知った免田さんは、自ら再審請求書を書き上 げ提出、第3次の請求では熊本地裁で”再審開始決定”を得るも、検察側の即時抗 告により、福岡高裁で、取り消されてしまった。

 その後も無実を訴え続けた免田さんは、第6次再審請求が認められ再審裁判が開 始となり、1983年7月15日に熊本地裁において本件につき無罪の判決を受け、日本 の裁判史上初めての”死刑確定者の再審無罪による生還”となった。






#####視点#####
偽証への誘導 - - - 29日夜のアリバイ証人

 再審裁判において最大の争点はアリバイの成否であった。免田さんには事件発生 時に完全なアリバイがあった訳なのだが、その証人(Iさん)は、日付に関する記 憶が明確ではなかった為、免田さんを犯人だと決めつけてしまっていた捜査当局に より、免田さんと一緒にいた日を強引に一日ずれた日に誘導されてしまった様であ る。

 一緒にいたのが29日(夜から翌朝)ならばアリバイが成立、30日(夜から翌朝) ならば不成立となり、いずれかである事は他の証拠から詰めていけた訳なのだが、 再審判決においては、別の証人の「30日夜には自分の所に泊まった」という証言が 認められ、間接的に、Iさんと一緒にいたのは29日(夜から翌朝)だったと判定さ れた訳である。

 再審請求審でIさんは次の様に証言している。
 「私は最初29日といったら刑事さんが本人は30日と言っているといわれたので、 それではそうかもわからないと思い・・・」

 実際には、この時点で免田さんはそうは言っていなかったのである。免田さんが 「自白」に追い込まれていったのは、その後で、Iさんの「30日」という供述調書 ができあがっていた事のショックによる絶望感が大きかったとも言われる。






((( 略歴 )))
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 1948.12.29---Sさん一家殺傷事件発生(夫婦死亡)           
 1949. 1.13---免田栄さん捜査員に連行される                 
       1.14---別件(窃盗容疑)で逮捕状を執行される         
       1.16---別件の釈放後に強盗殺人容疑で再逮捕される     
       1.28---強盗殺人罪等で起訴                           
 1950. 1.16---別件の窃盗容疑で追起訴                       
       3.23---第一審判決(熊本地裁)・・・ 死刑               
 1951. 3.19---控訴審判決(福岡高裁)・・・ 控訴棄却           
      12.25---上告審判決(最高裁)  ・・・ 上告棄却           
 1952  6.10---第1次再審請求  ==>  棄却                   
 1953. 2.11---第2次再審請求  ==>  棄却                   
 1954. 5.18---第3次再審請求                               
 1956. 8.10---再審開始決定(熊本地裁)                     
 1959. 4.15---再審開始決定を取り消し(福岡高裁)           
      12. 6---特別抗告棄却[=取り消しを支持](最高裁)   
 1961.12.16---第4次再審請求  ==>  棄却                   
 1964.10.28---第5次再審請求  ==>  棄却                   
 1972. 4.17---第6次再審請求                               
 1976. 4.30---請求棄却(熊本地裁)                         
 1979. 9.27---再審開始決定(福岡高裁)                     
 1980.12.12---検察側の特別抗告を棄却(最高裁)             
 1983. 7.15---再審判決(熊本地裁) ・・・ 本件につき無罪      
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戦後の主な事件

冤罪事件関係データベース